公務員の人事異動はどう決まる?――内示の日に泣いた新人職員

公務員として働いていると、毎年3月になると職場の空気が少し変わります。

「今年は誰が異動するのか」

「自分は残るのか」

「希望した部署へ行けるのか」

正式な内示が出るまでは、職員の間にもどこか落ち着かない空気が漂います。

私も43年間の公務員生活で、何度も人事異動を経験しました。

希望した部署へ行けたこともあれば、まったく予想していなかった部署へ異動したこともあります。

人事異動は、勤め人にとって最大のイベントの一つなのかもしれません。

人事異動は12月から始まる

私が勤めていた区では、12月になると翌年度の人事異動に向けて、職員に意向書の提出が求められました。

異動を希望するのか。

現在の職場に残りたいのか。

異動するなら、どんな仕事を希望するのか。

職員は自分の希望や事情を書いて提出します。

もちろん、希望を書いたからといって、その通りになるわけではありません。

それでも職員にとっては、自分の意思を人事当局へ伝える大切な機会でした。

人事異動は3月に突然決まるように見えますが、実際にはその何か月も前から動き始めています。

1月になるとヒアリングが始まる

年が明けると、所属長による職員のヒアリングが行われます。

本人がどんな仕事を希望しているのか。

現在の仕事をどう感じているのか。

家庭や健康上の事情はないか。

そうしたことを確認していきます。

その後、人事当局による所属長へのヒアリングも行われます。

ここでは本人の希望だけでなく、

「この職員にはどんな仕事が向いているのか」

「この職場には誰を残す必要があるのか」

といった組織側の事情も加わってきます。

人事異動は、本人の希望だけでは決まりません。

むしろ、そこが人事の難しいところなのでしょう。

3月、職場がざわつく「内示の日」

そして3月。

人事異動の内示が始まります。

まず所属長に人事異動の内容が伝えられ、その後、本人へ内示されます。

この時期になると、職場には独特のざわざわした空気が流れます。

「○○さん、課長に呼ばれたぞ」

「異動かな?」

誰かが上司に呼ばれるたびに、周囲が気にします。

異動を希望している人。

今の職場に残りたい人。

昇任を期待している人。

それぞれの思いが交錯します。

何度経験しても、内示の日というのは落ち着かないものです。

新人は3年、それ以外は5年

私が勤務していた区では、当時、新規採用職員は3年、それ以外の職員は5年が人事異動の一つの目安になっていました。

もちろん、必ずその年数を勤務しなければ異動できないというわけではありません。

健康上の事情がある場合。

職場との適性に問題がある場合。

あるいは組織として、どうしても人を動かす必要がある場合。

さまざまな事情によって、通常より早く異動することもありました。

しかし、本人が「異動したい」と希望したからといって、必ず異動できるわけではありません。

情報処理担当に勤務していた頃、そのことを強く感じた出来事がありました。

「この職場から異動したい」

情報処理担当に、一人の新人職員がいました。

コンピュータを扱う特殊な部署ですから、仕事には向き不向きがあります。

その新人は、情報処理担当の仕事になじめず、悩んでいたようです。

まだ配属されて1年。

それでも本人は、

「異動したい」

という希望を出しました。

通常の異動サイクルから考えれば、かなり早い希望です。

それでも本人にとっては、それだけ切実だったのでしょう。

やがて3月になりました。

人事異動の内示の日です。

異動したのは本人ではなく係長だった

ところが、本人には異動の内示がありませんでした。

代わりに異動することになったのは、その係の係長でした。

本人は残留。

もう一年、同じ職場で働くことになりました。

そのことが分かったとき、新人は涙を流しました。

よほど異動したかったのでしょう。

私は、そのときの姿を今でも覚えています。

人事異動というものは、辞令だけを見れば、名前と異動先が書かれた事務的なものです。

しかし、その一枚の裏側には、一人ひとりの希望や悩みがあります。

あの新人は、今では管理職に

その後、その新人も人事異動を経験し、さまざまな職場で仕事をするようになりました。

そして現在は、管理職として区の運営に携わっています。

あれほど職場を離れたいと願い、異動できないことに涙を流した新人が、長い年月を経て管理職になったのです。

あのとき異動できなかったことが、彼にとって良かったのか悪かったのか。

それは私には分かりません。

ただ、あの日涙を流していた新人が、その後も経験を積み重ね、管理職になった。

人事とは不思議なものだと思います。

人事異動は悲喜こもごも

43年間公務員として働いていると、さまざまな人事異動を見てきました。

希望した部署へ異動して喜ぶ人。

希望が通らず落ち込む人。

行きたくなかった部署へ異動し、そこで思わぬ能力を発揮する人。

逆に、希望していた仕事なのに、実際にやってみると合わなかった人。

人事異動は、単に職場を移るだけではありません。

上司が変わる。

同僚が変わる。

仕事が変わる。

場合によっては、その後の公務員人生まで変わります。

12月に一枚の意向書を書くところから始まり、3月の内示で一喜一憂する。

毎年繰り返される役所の人事異動。

そこには、その人数分だけの喜びや落胆があります。

私自身も何度も経験しましたが、最後まで慣れることはありませんでした。

人事異動は、勤め人にとって最大のイベントの一つなのかもしれません。

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