公務員は残業が少なくて楽? 激務も経験した私が43年間働いて思うこと

大学を卒業して、最初に配属されたのは図書館でした。

図書館の休館日は月曜日。

当然、私たち職員も月曜日が休みで、土曜日、日曜日は出勤です。

学生時代の友人たちの多くは、一般企業に就職していました。

彼らは土日休み。

私は月曜休み。

社会人になった途端、友人たちと休みが合わなくなりました。

それまで当たり前のように会っていた友人とも、だんだん会う機会が減っていきました。

その代わり、平日休みにはいいところもありました。

デパートへ行っても空いている。

映画館も空いている。

どこへ出かけても、土日のような混雑はありません。

これはこれで悪くありません。

ただし、当時は月曜日を休館日にしている施設も多く、

「せっかくの休みなのに、ここも休みか」

ということもありました。

平日休みには、そんな小さな弱点もありました。

そして、友人たちとの違いをもう一つ感じたのが「残業」でした。

残業がないことが不安だった

図書館勤務には、もう一つ特徴がありました。

残業がほとんどありません。

閉館後の仕事が終われば、その日の勤務は終了です。

今なら、

「残業がないなんて最高じゃないか」

と思います。

ところが20代だった私は、そうは思いませんでした。

仕事が終わって大学時代の友人に電話をしてみる。

すると、

「まだ会社だよ」

「今日は残業」

そんな返事が返ってきます。

友人たちは夜まで働いている。

一方の私は、仕事を終えて家に帰っている。

その差が、妙に気になりました。

「こんな生活をしていていいのだろうか」

本気でそう思っていました。

若いうちは仕事に追われ、先輩や上司に鍛えられながら成長していくものではないのか。

それなのに私は、毎日ほぼ定時に仕事を終えている。

楽だからうれしいというより、

「このままで社会人として成長できるのだろうか」

という焦りの方が大きかったのです。

今考えると、ずいぶん贅沢な悩みです。

公務員は残業が少ないと思っていた

最初の職場が図書館だったため、私は、

「公務員とは、こんな働き方をするものなのだ」

と思っていました。

ところが、その後の43年間で、その考えは完全に変わります。

人事異動によって、さまざまな職場を経験しました。

情報処理、保育、選挙、住民関係、福祉関係……。

同じ区役所の中でも、仕事の忙しさはまったく違います。

ほぼ定時に帰れる職場もあれば、特定の時期になると一気に忙しくなる職場もあります。

そして私が43年間で最も残業したのが、選挙管理委員会でした。

選挙管理委員会では時間外・休日勤務が月300時間近くに

選挙管理委員会は、選挙がなければ比較的落ち着いて仕事のできる職場です。

ところが、選挙が決まると状況は一変します。

投票所の準備。

職員の配置。

投票用紙などの物品。

期日前投票。

開票作業。

細かなものまで挙げれば、仕事はいくらでもあります。

しかも、選挙の日は動かせません。

「仕事が終わらないので、投票日を一週間延ばしてください」

などということは、当然できません。

決められた日に向かって、すべての準備を終わらせなければならない。

私の記憶では、最も忙しかったときには、時間外勤務や休日勤務などを合わせて、月300時間近くになったことがあります。

図書館にいた頃、

「残業もしないで、こんな生活をしていていいのだろうか」

と心配していた若い私に教えてやりたいものです。

「心配するな。そのうち嫌というほど残業するから」

と。

「公務員は残業が少ない」は本当なのか

43年間働いた経験から言えば、

公務員は残業が少ないとも、多いとも、一概には言えません。

職場によって、あまりにも違うからです。

毎日のように定時で帰れる職場もありました。

特定の季節だけ忙しくなる職場もあります。

選挙のように、ある時期だけ猛烈に忙しくなる職場もあります。

さらに同じ職場でも、担当する仕事や役職によって違います。

ですから、

「公務員だから残業が少ない」

という理由だけで公務員を選ぶと、配属された職場によっては驚くことになるかもしれません。

それでも民間企業とは違う空気があった

では、公務員の仕事は楽だったのか。

これは難しい質問です。

民間企業で働く友人たちから、

「公務員は生ぬるいよ」

と言われたこともあります。

若い頃は、

「そんなことはない」

と思っていました。

しかし、43年間働いた今振り返ると、彼らが言いたかったことも少し分かる気がします。

民間企業は利益を出さなければ会社そのものが成り立ちません。

売上、利益、競争。

常に結果を求められます。

一方、公務員の仕事は営利を目的としていません。

住民票を発行して利益を上げるわけでもなければ、図書館が本を貸して売上を競うわけでもありません。

住民に必要な行政サービスを、安定して提供することが仕事です。

仕事の目的そのものが違います。

だからでしょうか。

公務員の職場には、民間企業とは少し違う空気がありました。

それを「生ぬるい」と表現する人もいるでしょう。

私は今なら、

「おおらかだった」

という言葉の方が近いように思います。

もちろん、それが良いことばかりだったとは思いません。

競争が少ないことで、仕事への緊張感が薄れることもあります。

一方で、利益にならなくても住民のためにやらなければならない仕事があります。

どちらが厳しい、どちらが楽という単純な比較ではありません。

43年間働いて思うこと

新人の頃の私は、残業のない生活に焦っていました。

「若いうちに、もっと仕事で鍛えられなくていいのだろうか」

そんな心配までしていました。

その後、さまざまな職場を経験し、選挙時には時間外勤務や休日勤務などを合わせて月300時間近くになることもありました。

43年間働いて分かったのは、

「公務員」という一つの言葉だけでは、働き方を語れない

ということです。

楽な職場もあります。

忙しい職場もあります。

穏やかな時期もあれば、帰る時間さえ気にしていられない時期もありました。

ただ、民間企業で働く友人たちと話していると、やはり公務員の世界には独特の「おおらかさ」があったように思います。

大学を卒業したばかりの私が感じた、

「こんな生活をしていていいのだろうか」

という不安。

43年間働き終えた今なら、あの頃の自分にこう言います。

「そんなに焦らなくても大丈夫だ。公務員生活は、これから嫌というほどいろいろあるよ」

と。

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