昔の役所にはパソコンがなかった ― 元公務員が見た40年間の仕事の変化

私が公務員になった昭和57年(1982年)、職員の机にパソコンはありませんでした。

今なら、一人一台のパソコンを使って仕事をするのが当たり前です。

メールを送り、文書を作り、システムにデータを入力する。

ところが、私が役所に入った頃はまるで違いました。

役所にもコンピューターはありました。

ただし、職員が自分の机で自由に使えるものではありません。

コンピューターは特別な場所にあり、それを操作する専門の職員がいたのです。

それから40年以上。

大型コンピューターの時代から、一人一台のパソコンへ。

そして今度はAIです。

振り返ってみると、公務員として働いた40年間は、役所のコンピューターが大きく変わった時代でもありました。

コンピューターは「特別な部屋」にあった

私が入区した頃、役所の中心となるコンピューターは、情報処理担当のマシンルームに置かれていました。

いわゆる大型コンピューターです。

今のパソコンのように、職員が自分で操作するものではありません。

各課からデータや処理の依頼が情報処理担当に集まり、そこで一括して処理していました。

つまり、

「コンピューターを使って仕事をする」

というより、

「コンピューターで処理する仕事を情報処理担当にお願いする」

という感覚に近かったのです。

コンピューターは、普通の職員にとって少し遠い存在でした。

一部の部署には小さなコンピューターもあった

一方で、すべての仕事を大型コンピューターで処理していたわけではありません。

一部の部署には、「オフィスコンピューター」、通称「オフコン」と呼ばれる機械が置かれていました。

大型コンピューターを小さくしたような、業務専用のコンピューターです。

必要な部署がそれぞれ導入し、独自の仕事に使っていました。

私が後に異動した保育課にもオフコンがありました。

保育園の入所審査に使う名簿を作ったり、入所決定通知を出したり、保育料の徴収データを作ったりしていました。

今なら普通のパソコンでできそうな仕事ですが、当時は専用のコンピューターを使って処理していたのです。

パソコンは仕事の道具ではなかった

その頃、「パソコン」と呼ばれるものも、すでに存在していました。

ただ、少なくとも私の周りでは、役所の仕事をするための機械という感覚はあまりありませんでした。

私自身も当時、パソコンは役所の仕事で使う機械というより、個人が趣味で使うものという印象を持っていました。

パソコン通信などを楽しむ、どちらかといえば私生活に近い存在だったのです。

それが数年たつと、状況が変わってきます。

パソコンの性能がどんどん上がっていきました。

行政の仕事に使えるソフトも登場します。

すると、各課に置かれていたオフコンが、少しずつパソコンへ置き換わっていきました。

「情報処理担当にお願いする仕事」が各課へ

パソコンの普及によって変わったのは、機械だけではありません。

仕事のやり方そのものが変わりました。

それまで情報処理担当の大型コンピューターで一括して処理していた仕事の一部が、それぞれの担当課へ移っていったのです。

各課が自分たちでパソコンを使い、自分たちの業務を処理する。

今なら当たり前のことですが、当時としては大きな変化でした。

情報処理担当の仕事も変わります。

自分たちがコンピューターを操作して各課の仕事を処理する部署から、

「役所全体でコンピューターをどう使うのか」

を考える部署へ。

パソコンの導入方針やシステムの管理などが、次第に大きな仕事になっていきました。

一人一台のパソコンが当たり前になった

さらに時代が進むと、職員一人ひとりがパソコンを使うようになります。

昔なら情報処理担当へ依頼していたような仕事を、自分の机で処理する。

文書を作る。

データを入力する。

職員同士で情報をやり取りする。

コンピューターは「特別な人が扱う機械」ではなく、鉛筆や電話と同じような日常の仕事道具になりました。

一方で、各課がそれぞれ持っていたサーバーなどは、再び一か所へ集めて管理するようになります。

役所の情報処理担当でまとめて管理したり、外部のデータセンターを利用したりするようになりました。

機械は小さくなりましたが、扱う情報は逆に大きくなっていったのです。

機械を管理する部署から、情報を管理する部署へ

こうして振り返ると、情報処理担当の役割もずいぶん変わりました。

最初は、大型コンピューターを動かす部署でした。

それがパソコンを管理する部署になり、やがてネットワークやシステム、情報そのものを管理する部署へ変わっていきました。

私は、その変化の一部を役所の中から見てきました。

新人の頃には、職員全員がパソコンを使って仕事をする時代が来るとは想像していませんでした。

ところが、それが当たり前になりました。

そして次はAI

そして今、次の変化が始まっています。

AIです。

文章を作る。

資料を要約する。

情報を探す。

これまで職員が時間をかけて行ってきた仕事の一部を、AIが手伝う時代になろうとしています。

もちろん、行政には個人情報があります。

何でもAIに任せればいいわけではありません。

新しい技術をどう使い、どこまで使わせるのか。

情報処理を担当する部署の仕事も、また変わっていくのでしょう。

大型コンピューターを管理する時代から、

パソコンを管理する時代へ。

そして情報を管理する時代から、

AIをどう使うかを管理する時代へ。

変わるのは機械だけではない

40年以上前、コンピューターは特別な部屋の中にありました。

普通の職員が自由に触れるものではありませんでした。

それが今では、一人一台のパソコンを使って仕事をするのが当たり前です。

そして、その当たり前もAIによって変わろうとしています。

役所というと、

「昔から仕事のやり方が変わらない」

と思われることがあります。

けれど、私が公務員として働いた40年間だけを見ても、仕事のやり方は大きく変わりました。

役所の仕事も、世の中の変化と無縁ではいられない。

大型コンピューターの時代を知る者として、AIが役所の仕事をどう変えていくのか。

少し楽しみにしています。

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