区長のあいさつ文は誰が書く? 元区職員が明かす役所の裏仕事

区が主催する式典や大会では、区長が壇上に立ってあいさつをすることがあります。

参加した区民の方々は、区長の言葉として熱心に聞いています。

では、あのあいさつ文は誰が書いているのでしょうか。

実は、担当する職員が原稿を作ることがあります。

私も特別区職員として働いた43年間に、何度か区長のあいさつ文を書きました。

もちろん、職員が書いた文章を区長がそのまま読むとは限りません。

原稿を参考にしながら、自分の言葉に変えて話すこともあります。

今回は、私が初めて区長のあいさつ文を書いたときのことをお話しします。

初めて「区長のあいさつ」を書く

私が区役所に入って15年ほど経った頃のことです。

区主催の大会を担当することになりました。

そこで上司から任された仕事の一つが、区長のあいさつ文でした。

「区長のあいさつを、私が書くのか」

少し驚いたことを今でも覚えています。

大会に集まるのは、明るい選挙推進協議会の方々です。

選挙啓発活動などを通じて、地域で選挙を支えてくださっている皆さんでした。

当然、どんな大会なのか。

参加するのはどんな人たちなのか。

日頃どんな活動をしているのか。

そうしたことを踏まえて、区長が話す原稿を作ります。

完成した原稿は、秘書担当を通じて区長へ渡されます。

「いい区長のあいさつだったわね」

そして大会当日。

区長が壇上に立ちます。

私が作った原稿をもとに、区長があいさつをします。

それを聞いていた参加者の方が、

「いい区長のあいさつだったわね」

と言っていました。

私はそばで聞きながら、なんとも不思議な気持ちになりました。

「それ、私が書いたんです」

もちろん、そんなことは言えません。

少しだけ良心が痛んだような、妙な気分になったことを覚えています。

もっとも、職員が作った原稿は、あくまでも原案です。

そのまま読むこともあれば、区長自身が言葉を加えたり、表現を変えたりすることもあります。

最終的に何を話すのかを決めるのは、当然ながら区長本人です。

なぜ職員が原稿を書くのか

考えてみれば、区長は非常に多くの行事や会合に出席します。

福祉、教育、地域活動、選挙、文化、スポーツ……。

そのすべてについて、区長自身が一から資料を調べ、数分間のあいさつ原稿まで作るのは現実的ではありません。

そこで、その事業を一番よく知っている担当部署が原案を作ります。

これは単に区長を楽にするためではありません。

行事の趣旨や参加者への感謝など、その場で伝えるべき内容を間違えないためでもあります。

担当職員だからこそ分かる事情があります。

それを短い文章にまとめて、区長へ渡すのです。

表には出ない公務員の仕事

区長が壇上で話すのは、ほんの数分です。

しかし、その数分のために資料を確認し、文章を書き、言葉を直している職員がいます。

当然、その職員の名前が表に出ることはありません。

区役所には、こうした「住民からは見えない仕事」がたくさんあります。

私自身、若い頃は区長のあいさつ文を職員が作っているとは知りませんでした。

自分が書く側になって初めて、

「役所というのは、こうやって動いているんだな」

と思ったものです。

区長のあいさつを書く。

華やかな仕事ではありません。

それでもこれもまた、私が43年間の公務員生活で経験した、忘れられない仕事の一つです。

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