
「公務員は安定している」
よく言われる言葉です。
では、実際に定年まで働いた人間はどう感じているのか。
私は東京都の特別区職員として43年間働きました。
図書館、情報処理、保育、選挙、住民窓口、福祉など、さまざまな職場を経験しました。
良かったこともあれば、
「これは公務員という組織の弱点だな」
と思ったこともあります。
43年間働いた経験から、公務員という仕事のメリットとデメリットを振り返ってみます。
公務員のメリット① 収入が安定している
私が感じた最大のメリットは、やはり収入の安定です。
毎月、決まった日に給与が支払われる。
景気が悪くなっても、民間企業のように会社の倒産を心配することはほとんどありません。
若い頃は、このありがたさをそれほど感じていませんでした。
しかし、結婚して子どもが生まれると、その意味が変わりました。
わが家には二人の子どもがいます。
二人とも私立の中高一貫校へ進学しました。
住宅ローンを抱えながらの教育費は、決して軽い負担ではありませんでした。
それでも、毎月の給与とボーナスの見通しが立つ。
そのおかげで、長期的な家計の計画を立てることができました。
家族を持ったとき、公務員の「安定」は大きな強みになる。
これは43年間働いた私が実感していることです。
公務員のメリット② 長期的な人生設計を立てやすい
収入が安定しているということは、単に毎月の生活が楽になるということではありません。
数年後、十数年後を考えやすくなります。
住宅、子どもの教育、貯蓄、そして老後。
もちろん、公務員だから何もしなくても安心というわけではありません。
それでも、収入の見通しが比較的立ちやすいため、
「毎月これだけ貯蓄しよう」
「住宅ローンはこのくらいなら返せる」
といった計画を立てやすい。
退職した今になって、このメリットの大きさを感じています。
公務員のメリット③ さまざまな仕事を経験できる
これは意外に知られていないかもしれません。
自治体職員には人事異動があります。
私自身、43年間でさまざまな職場を経験しました。
図書館で働いていた人間が、まったく違う分野へ異動することもあります。
選挙の仕事をすることもあれば、住民と直接向き合う窓口に立つこともある。
異動は負担にもなりますが、見方を変えれば、一つの組織にいながら異なる仕事を経験できる制度でもあります。
私の公務員人生を振り返っても、この経験の幅は大きな財産になりました。
公務員のデメリット① 年功序列への違和感
一方、私が若い頃から強く感じていたのが、年功序列への違和感です。
私の給与が12万円ほどだった頃、30万円ほど受け取っていた先輩がいました。
当然、年齢も経験年数も違います。
給与に差があること自体は当たり前です。
それでも若かった私は、
「仕事への姿勢や成果は、どこまで評価されるのだろう」
と思うことがありました。
仕事ができる人。
それほど熱心ではない人。
少なくとも私が若かった頃は、仕事ぶりの違いよりも、勤続年数による給与差の大きさを強く感じました。
安定した制度の裏側には、こうした側面もあります。
ただし、これは単純に悪い制度とも言い切れません。
公務員には、公平・公正に行政を運営する役割があります。
短期的な成果だけで給与や処遇が大きく変わらないことには、一定の意味もあるのでしょう。
それでも、若い職員が意欲を失う原因になることはある。
これは私自身が経験した、公務員制度の難しいところです。
公務員のデメリット② 異動によって仕事が大きく変わる
さきほど異動をメリットとして挙げました。
しかし、これは同時にデメリットでもあります。
ようやく仕事を覚えた。
人間関係もできた。
仕事がおもしろくなってきた。
そんなときに異動することがあります。
そして異動先では、また一から仕事を覚えなければなりません。
本人の希望どおりになるとも限りません。
「この仕事をずっと専門にしたい」
という人にとっては、自治体の人事異動はつらく感じることがあると思います。
公務員のデメリット③ 住民対応より内部調整がつらいこともある
公務員というと、
「住民から怒鳴られて大変でしょう」
と思われるかもしれません。
確かに、苦情を受けることはあります。
言い返せば、それ自体が新たな苦情になることもあります。
しかし、43年間働いた私が振り返ると、住民対応以上につらかったのが組織内部の調整や人間関係でした。
必要な連絡がうまく伝わらない。
部署によって考え方が違う。
誰が責任を持つのか曖昧になる。
自分一人では解決できないこともあります。
これは公務員だけに限った話ではないでしょう。
どんな大きな組織にもある問題だと思います。
ただ、役所も決して「人間関係のストレスが少ない職場」ではありません。
公務員を目指す人には、そのことも知っておいてほしいと思います。
43年間働いて分かったこと
公務員には、大きなメリットがあります。
安定した収入があり、長期的な人生設計を立てやすい。
一方で、
年功序列、人事異動、組織内部の調整といった独特の難しさもある。
私が43年間働いて感じたのは、公務員は「楽な仕事」でも「理想の仕事」でもないということです。
しかし同時に、世間で言われる「安定」は確かに大きなメリットでした。
だから、公務員を目指す人には、
「安定しているから」
だけで決めるのではなく、
自分は組織の中で働くことに向いているか。
異動を受け入れられるか。
住民のために働くことに意味を感じられるか。
そんなことも考えてほしいと思います。
公務員という仕事には、良いところも、そうでないところもあります。
43年間働いた私に言えるのは、
その両方を知ったうえで選ぶなら、公務員は十分に魅力のある仕事だということです。
※公務員という仕事ではなく、「自分自身は公務員になって良かったのか」という視点から振り返った記事も書いています。

