
公務員は「公僕」。
住民のために働く仕事だと教えられ、「住民第一」という言葉に疑いもなく入庁しました。
けれど、実際に窓口に立ってみると、制度を丁寧に説明するだけでは解決できない場面にも出会います。
ときには怒鳴られ、理不尽だと感じる言葉を受け止めなければならないこともありました。
保育課という最前線
入区して三つ目の職場が「保育課」でした。
保育課には
- 庶務
- 保育園運営
- 入園相談
の三部門があり、私は「入園相談」に配属されました。
前の部署がコンピュータ管理だったため、
「パソコン周りを見てもらえればいい」という話もあり、気軽な気持ちで希望したのです。
ところが実際には、窓口対応の最前線でした。
25年前の待機児童問題
今でこそ待機児童は減りましたが、当時は違いました。
特に0〜2歳児は、4月を逃すとほぼ入れない。
空きが出ても、希望者が複数いれば必ず入れるわけではない。
それを何度説明しても、納得しない人がいました。
毎日やって来る母親
入園できなかった後、毎日のように窓口へ来る母親がいました。
ある日、「内定証明書」を持って現れます。
「仕事が決まった。保育園に入れないと困る」
私は確認のため、職場に電話しました。
返ってきた答えは、
「その方、辞退されています」
結果的に入園は見送り。
通知が届くと、案の定、怒鳴り込んできました。
「役所がそんな細かいこと探るんじゃない!」
そう言い捨てて帰っていきました。
怒鳴る父親
別の家庭では、現地調査に伺った際、
突然、いかつい父親が出てきました。
「俺の子どもが入れるように、保育園増やせよ!
使っていないバスを止めて、保育園を建てろ。」
「私は保育園を増やす権限を持っているわけではありません。」
「それなら、係長を出せ!」
私はその場で係長と電話を替わり、そそくさと退散しました。
公務員は感情的に言い返すことができない
こちらが言い返せば、
すぐに「区民の声」へ投書され、問題になります。
強い言葉で言えば、なんとかなる。
強く出れば黙る。
当時の窓口では、強い言葉をぶつけられることもありました。
サンドバッグという役割
「公僕」「区民のため」
それは、美しい言葉です。
でも現実には、
ときに「理不尽なパンチを受け止めるサンドバッグのようだ」と感じることがありました。
理不尽な言葉を受け止めることも、公務員の仕事の一部でした。
表には見えませんが、それも窓口職員が背負っている現実だったのです。
もちろん、多くの方は制度を理解し、冷静に相談してくださいました。
今回紹介したのは、私の中でも特に印象に残っている出来事です。

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