苦しい苦しい試験勉強を乗り越え、公務員という職業を手に入れました。
嬉しくないはずがありません。
私は役所の一部署、それも条例関係を転倒する部署を希望していました。
ところが配属場所は図書館です。
うれしさ半分、悔しさ半分といったところでした。
仕事着
今から40年あまり前は、地方公務員の仕事着はスーツに限られていませんでした。
ジーンズ、ポロシャツも可能でした。
図書館ではエプロンが支給され、むしろ、スーツ姿は推奨されない雰囲気です。
スーツで通勤すると、「今日はどうしたの?」といわれる始末です。
「公務員はスーツ姿」という私が想像した世界とはまるで違うものでした。
スーツ姿で貸し出しカウンターに出るよりも、ジーンズにエプロン姿の方が喜ばれました。
住民の方に対する親しみやすさも出るのかもしれません。
カウンターにきれいなお姉さんを

ある日、床屋さんに行きました。
行きつけの床屋さんで、私が公務員試験を受けたのも知っています。
「公務員試験に合格した」と話すと、喜んでくれました。
配属場所が図書館だと話すと、「カウンターに座っているのは公務員か」と聞いてきます。
さらに、「もっと若い人はいないのか」と尋ねられます。
当時は図書館業務も委託され始めていて、新聞などでも報道され始めていた時期でした。
「図書館って貸本屋だろう。もっと委託をしちゃえばいいんだよ」床屋さんの意見です。
図書館内部では「図書館とは何ぞや」などと独りよがりの議論をしていましたが、世間的には貸本屋さんそのものです。
床屋さんは続けて言います。
「我々もさ、図書館に行って、ジジイババアに応対されるより、若い姉ちゃんにニコリと笑われてみな。毎日でも図書館に通うよ」
そりゃあ、そうですよね。
私もかわいい人がカウンターにいれば、彼女目当てに図書館に通い詰めます。
区民にとって、図書館は手続きをする場≠役所ではないんですよね。
張り切って公務員になった新人職員の私にとっては、真っ当な意見ですが、どこか寂しい意見でした。
どこかで見た漫画のように、頭の中を一羽のカラスが「カァ~」と鳴きながら右から左へと飛んでいくような感覚を覚えたものでした。
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