係の三銃士

区役所に就職してから43年経ちます。(2025年2月現在)

最初に配属されたのが図書館です。

それも「新館設立準備担当」で、図書館を新しく設立するための部署です。

職員は3人。

まず係員の紹介をしておきます。

一人目 係長

係長は40代の女性です。

彼女は北海道出身で、大学では図書館学を学んできたという図書館学のエキスパートです。

公務員の他に、全国的な図書館問題を考えていく組織の有力メンバーでもあります。

今では許されないことですが、職場にかかってくる電話はその組織からの電話がほとんどで、業務に支障をきたすほどでした。

今ならLINEでやり取りする方法がありますが、当時は電話以外の方法はありませんでした。。

彼女の性格は明るく、頭脳明晰。

明るくて気さくで真面目、そして活発に行動する女性でした。

時々、「うわー」とか「えぇ~っ」とか突拍子のない言葉を発して、周囲を驚かせるのが珠にキズですが、私がこの自治体で勤め続けるキッカケを作ってくれたのが彼女です。

あまりに気さく過ぎて、時々、発する女性の下ネタは新卒の私には十分刺激的なものでした。

のちに公務員を早期退職して、児童への読み聞かせ、つまりストーリーテラーとして全国的に有名になっていきます。

また、ストーリーテラーのかたわら、海外の絵本の翻訳を手がけ、数冊の絵本を出版していくのです。

二人目 (通称)しみちゃん

しみちゃんは20代後半の男性。

労働組合の図書館部会の部会長をつとめている人物。

当時は労働組合の力が強く、人事異動の発表があると必ずといっていいほど、課長と団体交渉が行われていた時代です。

人事異動に不満のある人が、組合に不満を訴えるのです。

組合は組合員(職員)の味方という位置づけですから、どんな不満も取り上げざるを得ません。

裏では事前に組合と図書館長の間で話し合いがもたれ、かなり形式的な団体交渉でした。

当時は、全国的にも組合の力が強く、国鉄(今のJR)でも時限ストライキを行っていた時代です。

しみちゃんは、そんな労働組合の仕事をするかたわら、係長と同じ組織のメンバーでした。

でも、ヒラのメンバーらしくて、係長のように電話はほとんどかかってきませんでした。

しみちゃんは無類の酒好き。

時々誘われて一緒に飲みに行っていましたが、一年後の新図書館では二人の酒好きが加わり、毎日、お酒のお誘いに逃げ回る日々が続くようになるのです。

彼は後に区役所職員を辞め、地方都市の図書館長として、図書にICチップを貼り付ける盗難防止装置の導入に尽力していきました。

三人目 私

私は大卒で区役所に入りました。

配属希望は、条例を取り扱う部署の「文書係」でした。

大学で専攻したのは法律学。

悪友にそそのかされて弁護士を目指した時期もありました。

ところが区役所に就職してみると、配属先は図書館。

その落差にがく然として、「来年は違う自治体を受けようか」と迷いました。

でも、係長で出会い、その明るさと真面目さに感銘を受けて、「この自治体でやっていこう」と決意した私でした。

新しい図書館に思いを馳せ、役所のお作法と仕事を学ぶ毎日を過ごしていきました。

しかし、実際に公務員なると、描いていた公務員像と実態と落差に、失望の日々を過ごすことになります。

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