開館前の図書館で味わった小さな特権

公務員一年目、私の職場はまだ存在していませんでした。

翌年夏に開館する新しい図書館。

私の最初の仕事は、その図書館をゼロから作ることでした。

オープンに向け、館内の仕組みづくりや資料整備を進めていきます。

私は新人でした。

図書館勤務の経験もなく、役所のお作法すら分かりません。

そんな私に与えられた仕事は、業務委託のための図面づくりと、図書・カセットテープの選定でした。

新人に任された仕事

右も左も分からない状態でしたが、この選定作業は純粋に楽しかった記憶があります。

特にカセットテープ選び。

アリス、さだまさし、松山千春、松任谷由実……。

利用者のために選んでいるはずなのに、気分はすっかり自分のプレイリスト作りでした。

仕事なのか趣味なのか、境目が曖昧になるくらい夢中になりました。

選定した資料は、後日、何回かに分けて納品されます。

段ボールを開けるたび、新しいカセットがずらりと並んでいました。

まだ棚にも並んでいない資料です。

見ているだけで嬉しくなりました。

開館前だけの特権

ある日、上司が言いました。

「聴いてみてもいいよ。ただ、返してね」

「本当ですか?」

私は何本か借りて帰りました。

家で聴きながら、
「こういう資料が図書館に並ぶんだ」
と、不思議な誇らしさを感じていました。

昭和の頃の話です。

今なら資料の管理方法も違い、同じようなことはできないでしょう。

けれど、あの頃はまだ人と人との距離が近く、少しおおらかな時代でした。

図書館づくりは青春だった

図書館では、その後、やるせない思いもたくさん経験しました。

それでも、新館準備の時間だけは別です。

何も知らない新人だった私が、好きな音楽に囲まれながら、一つの図書館ができていく過程に立ち会えた。

今でも少し眩しく思い出す、青春の一場面です。

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