エージェントと会う

図書館設立準備担当に配属されて2か月ほどたった頃。

上司から告げられました。

「明日、エージェントと会うから準備しといて」

役所に入りたての私にエージェントと会うなんて、思いもよらないことです。

と同時に「カ~ッコイイ」。

すごくワクワクする気持ちを押さえられませんでした。

新人である私にとって準備することは何もなくて、ただ同席するだけです。

エージェントと打ち合わせるなんてスゴイこと。

家に帰って母にエージェントに会うことを報告したのは、もちろんのことです。

エージェントは現れず

集合場所は、役所の本庁舎です。

本庁舎の建物は古く、聞くところによると24年は経っている代物です。

ちなみに、このブログを書いている現在(2025年1月)でも使っており、すでに57年経ってしまいました。

本庁舎で設立準備担当全員が待ち合わせます。

全員といっても、私を含めて3名の小さな係です。

係長(後の図書館長)を先頭にして、後から職員2名が会議室へと続きます。

ある会議室へと通されました。

会議室といっても、10人入るかどうかの小さな部屋です。

すでに机はロの字にセットしてありました。

その正方形の一辺に係長を中心に、両脇を私ともうひとりの職員が固めます。

緊張して待っていると、大きな資料をかかえた技術職の職員が5名入ってきました。

あとはエージェント待ちです。

すると、会議が始まってしまいました。

「えっ、まだエージェントが来てないじゃん!」

エージェントと会うのを楽しみにしていた私はあわてました。

私は新人職員です。

発言は許されておらず、とりあえず会議の進行を見守るしかありませんでした。

その間、会議はどんどん進んでいきます。

結局はエージェントは現れずに会議は終了してしまいました。

「???」

私はキツネにだまされたような気持ちでした。

エージェントは職員

会議が終わった後、もうひとりの職員に聞いてみました。

「エージェントは来ませんでしたね。」

すると、もうひとりの職員は驚くように言いました。

「エージェント?そんなものいない、いない」と手を横に振ります。

「でも、昨日、係長にエージェントに会うからって言われましたよ」

必死に訴える私に、その職員は「え~っ?」というだけです。

そこに、ひょいと顔を見せた係長。

「あはは(笑)、私は営繕(えいぜん)と会うって言ったのよ。
 エージェントじゃなくて、営繕(えいぜん)!」

「バカか、こいつ!」もうひとりの職員はうれしそうに言います。

営繕は「営繕課」といって、役所の建物の建築にかかわる部署です。

私の描いていたスーツをバリバリに着こなしたエージェントは、役所の営繕課の職員のことでした。

役所の組織を知らない私にとっては、胸をときめかせた、しかしトホホな2日間でした。

日々が勉強の新人時代でした。

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